第3章 居候です
「え?!黄瀬が?!」
次の日、部活はオフだった。
以前今度のオフの日に出掛けようと言っていたのに、昨晩も今朝も誘って来なかった。
帰る前にでも来るかと思いきや、それも無かった。
不思議に思ったが、たまには一人でショッピングにでも行こうと下駄箱に行くと、バスケ部の一年に出会った。
ついでに黄瀬の行方を聞いてみると、誠凛に行くと言っていたらしい。
頭が痛くなった。
「マジでか…」
「先輩には内緒にしとけって言われてたんすけど…」
「あーいいよ。ありがとう、言ってくれて」
誠凛と聞いて、いや、あの子がいるところと聞いて、確かに黄瀬が黙っているわけがなかった。
ショッピングは諦めて、私は誠凛に行くことにした。
「バカワンコ」
そもそも、ここからだと電車に乗って行かなきゃならない。
ちゃんと行けたんだろうか。
まぁこのご時世、スマホなんて便利なもんがあるから大丈夫だろうけど。
そしてようやく誠凛に着いた。
「やっぱり新設校だし綺麗だなぁ…」
まぁ海常もそれなりに綺麗だけど。
違う学校の制服が気になるのか、かなり視線を感じるけどこの際気にしてられない。
アイツが何をしでかすかわからないからだ。
「うわっ、何この女子の数…」
予想通り、体育館の前には人集りが出来ていた。
が、しばらくすると扉が閉められ、女子の集まりは消えていった。
ひと気が無くなったところで扉に手をかける。
まず開けたらどうしよう。
必ず視線はコッチに集まるし、何か言わないと。
そもそも連絡も無しに訪問なんて失礼すぎる。
よし、まずは謝ろう。
ガラッ
「すみません!!」「あれぇ?!」
扉を開けてまず謝罪の言葉を発したと同時に、黄瀬の気が抜けるような声がした。
「「「「え…?」」」」
誠凛の皆さんがこちらを向いた。
予定通りにはいかなかったが、もうこの際何でもやってしまえと、黄瀬の右耳を引っ張った。
「いだっ!え?!なまえさん?!」
「ほんっとに申し訳ありません!ウチの黄瀬が!」
「あ、いや…」
「私、海常のマネージャー、2年のみょうじなまえです。コイツ、何か失礼なことしてませんでしたか?」
「いや別に特には…」
「強いて言うなら無駄に目立ってることくらいです」
ふと、横から懐かしい声が聞こえた。