第3章 居候です
というのも、彼がバスケをしているのを見たのは私が2年の冬から。
そして、それから次の全中まで。
突然現れたシックスマンに、異例なスタイル。
それに特に上手く噛み合うことが出来たのは、『キセキの世代』のエースと呼ばれたアイツだけだった。
だから余計にアイツ以外とのバスケを想像することが出来ないのだ。
「だね」
「あ、なまえさん知ってたんスか」
「さつきから聞いてたからね」
「あぁ〜なるほど」
中学の時の後輩であるさつきとは、引退してからもずっと連絡をとっていた。
だからコイツら後輩に何があったのかも何となくは知っている。つもり。
だけどその場にいたわけでもなければ、選手でもない私には何も出来ない、何も言えない。
ただ少しでも、重荷を一緒に持ってあげる。
それくらいしか今は…。
「なまえさん?どうしました?」
「あ、いや、何もないよ」
「?そっスか?」
それより私が心配なのはさつきだ。
一人でアイツらの変化に立ち向かって、でもどうしたらいいかもわからず、結局ただ見ていることしか出来なかった。
そして今では全員バラバラになり、さつきは幼馴染の元へ行った。
いつか、いつかまたみんなでバスケをすることを願っているさつきには、現状がどんな風に映っているのだろう。
「なまえさん、やっぱ調子悪い?」
「え?ううん、大丈夫だよ」
「でも、もうミーティング終わったっスよ?」
「えっ」
「みんなも帰っちゃったっス」
「ボーッとしてた…」
まぁ今こんなこと考えても仕方がない。
まずは目前の練習試合から。
ゆっくり考えることにしよう。
黄瀬も、ほんの少し変わったみたいだから。
「黄瀬さぁ…」
「なんスか?」
「バスケ、好き?」
「え?んー…」
前なら、好きっスよ!って、当然のように言っていた。
その時は毎日に退屈してた頃だからだろうけど。
それでも、今でもずっと好きでいてくれてたら嬉しい。
「まぁ、嫌いじゃないっスよ」
「そ…っか……」
だけどその気持ちも、そう長くは続かなかったようだ。
寂しいけれど、あの子がいる限りまだ望みはあると思う。
まだ終わりじゃない。始まったばかりだ。
黄瀬も、他のみんなも、いつかきっと取り戻す。
あの頃の気持ちを。