• テキストサイズ

レッテル 2

第6章 挨拶参り


「痛むか?」

屋上。
雲ひとつない真っ青な空の下、隣に座る誠也君の手があたしの頬に触れた。
結局授業はサボった。
なんだか受ける気にならなかったから。

「ううん、大丈夫。」

そう笑いながら彼の方に顔を向ける。
彼と目が合った。
汚れのない綺麗な黒い瞳にあたしが映っている。
あたしもまた同じ。
あたしの瞳にも彼が映っている。
それを遮るものは何もない。
ゆっくりと近づく顔。
唇を重ねるのに時間はかからない。
だけど重ねた時間は長く、そして甘い。
まるで熟した果実の様に。

――この時間が長く続けばいいのに

そう思うけど、刻々と時間は過ぎて行く。
それが現実。

キーンコーンカーンコーン

授業の終わりのチャイムがなった。
これも現実。

「昼までここにいるか?」

唇を話した彼が、口角を緩めながら言った。

「うん。」

返事をする小さな声。

サアァァアア―――

冷たい風の音で消えて行く。
だけど、彼はあたしを後ろから抱き寄せた。

/ 542ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp