第6章 挨拶参り
「まぁ、怪我ですんでよかった…なッ。」
「いてぇッ!!」
保健室。
誠也君の鼻に湿布を貼った三柴先生が、鼻を弾いた。
痛みで彼が悲痛の叫びを上げる。
「高嶋とか…懐かしいな。」
そんな彼に背を向けながら先生が呟く。
「知り合いなんですか?」
湿布を貼られた頬を触りながら尋ねた。
「まぁ、知り合いっつうか何て言うか……秘密。」
そう言うと、ファイルを手に取った。
「あんた何者なんだよ?」
彼が訝しげに先生を見ている。
「あ?ただの校医に決まってんだろ。」
鼻で笑うと先生が手を動かし始めた。
「つか、さっさと行け。長居しても何も出さんぞ。」
シッシッと追い払うように手を振る。
「なんつう、先公だよ。それでも先公か?」
誠也君が呆れながら立ち上がった。
「あぁ。」
先生はそう頷くと、再び手を動かし始めた。
ガラガラガラ――
戸を開け出ていくあたし達。
「揉め事はバレねぇようにしろよ。」
戸を閉める時、そう聞こえたような気がした。