第6章 挨拶参り
「テメェが俺に勝とうなんざ百年、…いやそれ以上にはえーんだよ。分かったか?」
そう言って放される拳。
誠也君は微動だに動かない。
ドロドロと流れる血が、不安以上に恐怖を誘う。
「誠也!!」
近寄る先輩。
その横を不気味に笑いながら高嶋が通り過ぎて行く。
目の前に迫る悪魔は、顔と手を血で染め破壊を楽しんでいるのだ。
――許せない。
そう思うけど、足が竦(すく)んで動かない。
彼に駆け寄りたくても、この悪魔を何とかしないと行けない。
悔しくて唇を噛んだ。
泣いている場合じゃない。
カーディガンの袖で涙を拭う。
「……クソ女(あま)。」
目の前に来た高嶋があたしを上から睨み付けている。
ギリギリと奥歯を噛み締め、眉間には大量のシワが刻まれている。
「………。」
無言で高嶋を睨み付ける。
コイツにいう言葉なんて何もない。
しいていうなら、
"消えろ"
ただそれだけ。
この男が憎い。
心の底から。