第5章 悪魔の微笑み
夜中、あたしは布団で眠る彼をジッと眺めていた。
ベッドで布団に潜りながら。
"無事で良かった"
そう言ったけれど、心の中にある不安は拭えていない。
次は高嶋が彼の前に現れないとも限らない。
そうなれば、争いは避けられない。
ギュッと毛布を掴んだ。
考えれば考えるぼど、不安が不安を呼ぶ。
なにも役に立たない癖に、余計なことは一丁前に考える自分に腹が立つ。
"役に立ちたい"
いつもそう思うけど、結局は足手まとい。
なんだか悔しくなった。
役に立てないことも、迷惑ばかりかけることも。
悔しくて涙が溢れてくる。
あたしは弱い。
泣くことで誰かに甘えようとしてる。
昔からずっとそうだった。
"泣けば誰かが助けてくれる"
心の奧でそう思っている自分がいる。
ズルいなぁ…あたし。
再び彼の方へ目を向けた。