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レッテル 2

第4章 逃亡


別に怒ってはいない。
むしろ、この状況を楽しんでいる自分がいる。
焦る彼。
何度も必死に訴えて。
そんな姿が面白くて、怒ったフリをする。

――本当、意地悪だなぁ…あたしって。

彼に隠れてクスリと笑う。

お洒落な服を見てる最中も、靴を見てる間も、勇人君の服を見立ててる時も、彼は必死に訴えていた。

もうそろそろ良いだろう。

「怒ってないよ。」

空が夕焼けに満ちた頃、振り向いてあたしは言った。
パラパラと長い髪が揺れる。
ニコッと笑いながら彼の顔を見る。

「…………。」

荷物を両手に持った彼がなにも言わずにあたしから顔を反らした。
心なしか怒っているような気がする。

ドクドクドクドク―――

鼓動が早くなる。
急に不安が襲ってきた。

――嫌いになったの?

涙が込み上げてきた。

「ばーか、嘘だよ。」

彼はそう言うとこちらを向いて意地悪く笑った。

「バカッ。」

そう言って頬を膨らますあたし。

「あほくさ、付き合うって面倒くせぇな。」

勇人君がボソリと呟いた。
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