第4章 逃亡
「なら、一緒に来い。」
「え?」
「…だから、族潰すって言ってんだよ。」
更に高嶋の眉間に大量のシワがよる。
「そんなことしたら…俺等また秋本さんに…殺されますよ…。」
「あ?」
「だから、秋本さんに―――。」
バキぃッ――
「ッ―――」
高嶋の拳が宮元の顔面にめり込んだ。
「なら、今ここで俺がテメェ等を殺すゾ?」
拳越しに高嶋が激しく睨み付けている。
「分かり……ました。」
ドロリと血が出る鼻を押さえながら宮元は小さく頷いた。
いや、頷くしかなかった。
高嶋の威圧的な態度に、今の彼等が逆らえるはずもない。
前から来る、"族"という名の恐怖。
後ろから迫る"高嶋"という名の恐怖。
二つの恐怖に板挟みされた宮元達は選択する余地がない。
どっちを選んでも痛みを伴うのだから、今逆らうべきではない。
彼等はそう思っていた。
伊藤もまた同じ。
伊藤は高嶋にバレないようにこっそりと溜め息をついた。