第4章 逃亡
同時刻。
「あッ…あッ…――。」
部屋に響き渡る淫らな声。
何だか変な声が聞こえてくる。
と、眠っていた勇人は気になって思わず目を開けた。
そして、声の方へ目を向ける。
――何やってんだ兄貴ッ!?
勇人は激怒した。
まだ十歳の男の子には刺激が強すぎると。
最近、S○Xという大人の言葉を知ったばかりの初々しい時期。
別にするなとは言わない。
だけど、場所を考えろ。
そう叫んでやりたかった。
「せ……ぃ…や……くん――。」
聞こえてくる桜の甘い誘惑。
下半身が熱くなるのを勇人は感じた。
けれど、それを何と呼ぶのか幼い少年はまだ知らない。
「……もう…ダメ――。」
そして、次に聞こえてきたのは誠也の甘ったるい声。
勇人は吐き気を感じた。
――オエッ…兄貴気持ち悪ッ。
熱が一気に冷める。
上が下を向いた。
何ってナニが。