第4章 逃亡
「……。」
息を乱す彼がゆっくりと動く。
あたしに覆い被さりながら。
目の前に愛しい人が居るのに、目を閉じるとアイツの顔が浮かんでくる。
――消えろ、消えろ、消えろ。
そう思うけど思えば思うほど逆効果。
瞼の裏にどんどん増えていく。
好きとかいう恋愛感情じゃない。
ただ悔しかった。
皆の関係を崩すような物言い。
思い出すだけで腹が立つ。
「…どうした?」
彼が動きを止めた。
「うぅんなんで――」
「…あいつの事か?」
彼にはなんでもお見通しらしい。
彼から目を反らした。
「心配すんな大丈夫だから。」
彼があたしの顔を手で自分の方へ向かせると、深くキスを落とした。
カーテンの間から差す光があたし達を照らす。
「な?」
彼が笑った。
「うん。」
あたしも笑う。
そして、目にはいる彼との繋がり。
思わずあたしは頬を紅潮させた。
「…ごめん。」
彼もあたしの見た方をちらりと見て頬を紅潮させた。