第4章 逃亡
「どうしたの?」
あたしの胸に顔を埋める彼に尋ねる。
そして、垂れた真っ赤な髪を優しく撫でた。
「…色々。」
彼は不器用に答えた。
今の彼は甘えん坊。
まるで子供。
だけど、それを不快に感じることはない。
たまには弱音を吐いてもいいんだよ?
口に出さずに心の中で投げ掛けた。
「好き……。」
彼が顔を上げた。
ゆっくりと重ねられる唇。
ほんのり煙草の匂いがする。
灰皿に無造作に重ねられた煙草の吸い殻の山が目に入った。
何か考え事をしていたのだろうか。
唇を重ねながらもチクリと胸が痛む。
原因はわかってる。
高嶋。
あの顔が脳裏に浮かんだ。