第4章 逃亡
ベッドに眠る瞼を泣き腫らした彼女。
俺は小さな明かりしかない薄暗い部屋で一人煙草を吹かしていた。
勇人はもう寝た。
俺も彼女が敷いてくれた綺麗な布団で寝ようかと思ったが、身体がそれを欲さない。
フ―――
煙を吐き出す。
――高橋(あのひと)が出てこなければいい。
そう思っていたけど、あっという間に二年という月日が経った。
上田さんが死んで、あの人が野放しになったときは町が荒れた。
詳しくは、町の不良が次々と餌食になった。
女も例外ではない。
自分の気に入った女なら直ぐに手を出す。
人の女など関係なく。
俺は彼女に目を向けた。
赤くなった頬。
高橋が彼女に手を出した。
それに苛立ちを感じる。
本当は今すぐにでもぶっ殺してやりたい。
ギュッと拳を握った。
だけども、アイツに勝てる保証はない。
そもそも、喧嘩に保証なんてない。
運…いや実力がものをいう。
そう考えるとますます苛立ちを感じた。
まだまだ俺は弱い。
俺より強い奴なんてごまんといる。
でも、強くなりたい。
彼女を守れるようになりたい。
荒々しく灰皿に煙草を押し付けた。