第21章 感情
「で、その"上原"がなにしたんだよ。」
「岩中興業の奴らにちょっかいかけたらしくて…追われてるらしいんですよ!!」
「なんだ、そんなことか。」
「"そんなことか"…じゃないですよ!!相手がこっちに金要求してきてんだから!!」
「で、その上原は?」
「逃げてます。」
「……自業自得だろ、テメエのケツはテメエで拭かせろ。」
亜久里はそう言うと、再び目を閉じた。
「あんたそれでもリーダーかよ!!仲間が大変な時に――。」
「じゃあ…なんでその仲間が他の仲間を巻き込むようなことすんだよ?」
再び開いた目の奥の瞳が棗を射る。
「それは……。」
「都合の良い時だけ頼ってくんじゃねぇッ!!」
ズクンッ―――
亜久里の言葉が棗の心に突き刺さる。
痛む胸。
ゆっくりと起き上がった亜久里の真剣な目を見ることが出来ない。