第21章 感情
夕方。
ドタドタドタ――――
朝日宅に響き渡る足音。
それは、二階へと向かっている。
バンッ―――
「平さんッ!!」
ドアを開いて叫ぶと、ベッドで眠る桜と亜久里。
二人仲良く並んで横になっている。
―――なんでこんな事になってんの?
そう思いながら顔を歪める、桜の弟"棗"。
でも、今はそれどころではなかった。
「平さん、起きて!!」
ベッドに近付き揺さぶる大きな身体。
「…あ?」
気付いた亜久里がうっすらと目をあける。
少なからずも不機嫌そうな顔をしている。
「大変なんですよ!!」
「……なにが?」
「上原さんがヤバイことに首突っ込んだみたいで―――。」
「…上原?」
回らない脳をフル回転させて記憶を呼び覚ます。
甦(よみがえ)ってくるのは、昔の記憶。
薬に手を出す前の事。
――上原……上原……あぁ、あの気の短いチャラチャラした男か。
思い出したのは、女癖の悪い金色の髪の男。
短めの髪をしており、直ぐに喧嘩するどうしようもないダメ男。
いつも亜久里にへつらっていた。
まさに"虎の威を借る狐"だ。