第21章 感情
彼の言うことは最もだと棗は感じていた。
今まで独りぼっちだった亜久里。
自分達のリーダーなのに探しもせず、偶然見つけただけなのに苦労して見つけたような口振り。
ほったらかしのくせして、都合のいい時だけ利用する。
知らぬ間に傷付けていたことに気づいた棗は、なにも言えずにいた。
「もう、俺に関わるな……。」
そう言って立ち上がろうとする亜久里。
なぜか、服が妙に重い。
振り向けば、が服を掴んでいた。
「……スー……スー……。」
聞こえてくる寝息。
どうやら無意識のようだ。
「………。」
"関わるな"
そう捨て台詞を吐いたのにもかかわらず、振りほどけないか細い手。
どうしていいか分からない彼は、再びベッドに腰をかけた。
「………。」
「………。」
今の空気ほど気まずいものはない。
棗もまた同じ。
スヤスヤと無邪気に眠る姉が羨ましくて仕方がなかった。