第21章 感情
「じゃあ、これ約束のお金ね。」
「どうも。」
車が着いたのは、人里離れた山奥。
近くでは、作業着を着たさまざまな男達がいる。
目立つのは今にも死にそうな男。
立つことさえ困難の様に思える。
「おら動け!!
オメェは借金返し終わるまでタダ働きなんだからよ!!
今くたばられたらこっちが迷惑なんだよ!!」
「ひぃっ。」
ガテン系の厳つい風貌の男が蹴飛ばした。
無理に立たされる身体。
連れてこられた男は、声にならない悲鳴をあげている。
「払うから!!払うから止めて!!」
男が渡瀬の足にすがり付いてくる。
「もう、お前に助かる道はねぇ。」
ドガッ―――
渡瀬は男を蹴飛ばすと車へと歩いていく。
「………。」
――可哀想に。
そう思うも、春本は渡瀬の後に続く。
「さっさと来いッ!!」
「やめてくれ――!!」
後ろから男の叫び声が聞こえてくる。