第21章 感情
車は走りだす。
無言で。
それが、男の恐怖をあおらせる。
「お前の選ぶ道は2つだ。」
「臓器は売りたくねぇ!!」
「は?テメェはいつの時代の話してんだよ。今時ねーよそんなの。」
男の言葉に渡瀬が鼻で笑った。
「お前の選ぶ道は2つだ。
死ぬまで汚ねぇ仕事をし続けるか、生命保健かけてトラックに飛び込むか。」
「どっちも嫌に決まってんだろッ!!」
「お前に選ぶ権利はねぇ、俺が決めてやる。」
――あれ?選択肢の意味は?
春本は無表情で運転する渡瀬を見た。
けれど彼はもうすでに電話をかけている。
「あぁ、いつもお世話になってる渡瀬です。
今日新しいの入るんですけどいいですかね?
あぁ、そうですかそれは良かった。
じゃあ、すぐ行きます。」
そう言って切った通話。
調度信号に引っかかった為、渡瀬が振り向く。
「ついこの間、作業員が一人減ったとかで大喜びしてたぞ。良かったな。」
振り向いた渡瀬が不気味に笑っている。
「減ったって……どうしてですか?」
春本が尋ねる。
「過労死したんだよ。」
「ひいぃぃいい!!」
渡瀬の言葉に男が酷く怯えた。