第3章 もう一人の男~
「テメェはそうやって人の大事なもん汚していくんか?…アキが作った族を汚していくんかよッ!!テメェは極使天馬の面汚しだッ!!出てけッ!!」
叫び声が響いた。
皆が彼を見ている。
拳を握ってこめかみに青筋を立てる望田さんを。
「……っせぇ!!」
バキぃッ―――
あたしから手を放した高嶋が望田さんの顔面を殴った。
めり込んだ拳の下にある鼻から血がポタポタと垂れている。
けれど、彼は動かずジッと高嶋を睨み付けている。
「なんでも暴力で動くと思ってんのか?オメェはアキから何学んだんだよッ!!アキの言ってたこと忘れたんか!!アキの気持ち無にしやがって!!」
再び望田さんの拳が動いた。
バシィ―――
「アキアキアキアキ…うるせぇんだよ。所詮アイツは死んだんだ。無様にな。」
拳を受け止めた高嶋が笑っている。
「マジ傑作だよ。頭撃たれて死ぬとか。結局何も守れてね―――」
パシン―――
乾いた音が響く。
「はぁはぁはぁ……」
上下するあたしの胸。
宙に浮く手。
気づけば高嶋の顔を叩いていた。
もう後戻りは出来ない。
いや、最初から後戻りをするつもりもない。
ただ言いたかった。
「上田さんはずっと極使天馬の皆を守ってくれてる!!あたしも彼に命を助けられた!!上田さんは生きてるの!!皆の心の中で!!だから無様とか言うなッ!!守れてないとか言うなッ!!」
涙が溢れてきた。
霞む視界。
悔しくて唇を噛み締めながら何度も何度も特攻服の袖で拭った。
きっと誠也君も同じことを言うと思う。
誠也君だけじゃない。
皆もきっと。