第3章 もう一人の男~
「………。」
高嶋は何も言わない。
ジッとあたしを睨んでいる。
でもそれが恐ろしくて、震える唇をキュッと噛んだ。
「はい、そうですね……とでも言うと思ったか?」
パシンッ―――
乾いた音が響いた。
激しい痛みがジワジワと頬に広がる。
「テメェッ!!高嶋ぁッ!!」
「誠也!!」
あたしの後ろで、今にも飛びかかりそうな誠也君を必死に先輩達が止めている。
「女だから何もしねぇ……そう思ったんか?あ?んなわけねーだろ、俺に逆らう奴は女でも許さねぇ。」
上から高嶋があたしを見ている。
込み上げてくる涙を堪えながら、あたしも彼を見た。
キッと睨み付ける。
「女…女って馬鹿にしないで。あたしはあんたを許さない。」
震える唇で吐き出した言葉。
悔しかった。
何故かわからないけどすごく――。
「女ごときが……来いッ!!」
「放せッ!!」
手を掴まれた。
強引に引きずられる。
「秋本、もうこの女返さなくてもいいよな?女なんてまた飼えばいいんだからよ。」
立ち止まってそう言った高嶋の口角がつり上がった。
「ふざけんなッ!!」
彼が先輩達を振り払い高嶋に殴りかかる。
バコぉッ―――
高嶋の顔が横を向いた。
誠也君が立ち止まる。
彼ではなかった。