第21章 感情
「…俺は恋愛の事はわかんねぇ。でも、相手を信じられねぇならいっそ別れちまえ。」
「……え?」
「信じられねぇ奴とこの先ずっとやっていけるのか?
疑ってばっかりの人生なんてつまんなくねぇか?
……俺はごめんだな。」
彼はあたしから顔を反らした。
ジッとテレビを見ている。
彼の言っている事はもっともだ。
分からないわけではない。
だけど…
"別れたくない"
その気持ちが強くて、何も言えずにいる。
「……もし別れたくねぇんなら、信じるしかねぇだろ。
本当に好きならそいつのすべてを受け入れろ。
……なくなってから気付いても遅いんだよ、……何に関しても。」
平さんは、低く吐き出した。
まるで自分自身に言い聞かせているようで、悲しそうな表情をしていた。
彼の過去に何があったかは知らない。
それを聞くこともない。
誰にだって触れてほしくない秘密や過去はある。
無理に聞いてしまえば、それは無神経な人だと思う。