第20章 債務者と書いてカモと読む
というわけで、加奈恵の目の前に置かれたのはタラコスパゲティ。
「社長いただきまーす。」
なぜか、渡瀬の奢りになっていた。
「さっさと食って仕事しろ。」
完食した渡瀬は不機嫌そうに加奈恵を見ている。
しかし、置いて帰ることはない。
何故なら後が面倒臭いから。
「あ、社長……今夜どう?」
潤んだ瞳が渡瀬をとらえている。
彼女は少々下品だ。
「あ、あかまむし買わないと。」
訂正、かなり下品だ。
周囲の人間がジロジロと見ている。
「お前、今すぐ消えろ。」
うんざりしたように渡瀬が吐き出した。
「あぁん、社長ドSなんだからぁ。」
「…もういい、疲れる。」
さすがの彼も相手にしきれないようだ。
目線を合わせていない。
しかも、馴染めない春本は蚊帳(かや)の外で話に入れていない。
ただ、ひたすら加奈恵が話しているだけだった。