第20章 債務者と書いてカモと読む
「そんなんで足りんのか?」
ナイフとフォークを駆使して豪快に切り分けた肉を、口に運ぶ渡瀬。
「俺、少食なんで。」
それを見て、春本は胸焼けを感じた。
本当の所、彼は少食じゃない。
ただ、渡瀬の前で飯を食べる気力になれないだけ。
要するに緊張しているのだ。
「ふーん。」
渡瀬は興味無さそうに返事すると、次々と肉を口へ運ぶ。
「………。」
春本も無言でサンドイッチを口へ運んだ。
二人の間に会話はない。
騒がしいのは周りだけ。
それと、
「あー!!やっぱり社長だったー!!」
ファミレスの入り口。
二人を指差す騒がしい女。
加奈恵だ。
「……はぁ…。」
渡瀬がため息を吐いた。
あからさまに嫌そうな顔をしている。
「お昼、あたしもご一緒しまーす。」
春本を押し退けてドサッと座る加奈恵。
あまりの強引さにあきれてしまう。
渡瀬は後悔した。
事務所に近い所の店に寄るんじゃなかったと。
しかし、一度事務所に戻る必要があったため、しかたなかった。