第20章 債務者と書いてカモと読む
「あの…さすがに息子さんがプレゼントした財布はまずかったんじゃないですか?」
パチンコ屋の駐車場を出た辺りで、春本が恐る恐る尋ねた。
「お前……本気で言ってんのか?」
渡瀬の目が、ジロリと春本に向く。
「いや……そういうわけじゃ――。」
「あいつはもうとっくに息子に見捨てられてる。旦那は五年前に他界、あいつの身寄りはもういねぇ。」
低く吐き出した言葉。
車が目の前を通りすぎていく。
信号は赤だ。
横断歩道の前で並んでジッと立つ。
「ギャンブルも一種の麻薬みたいなものだ。
真面目な奴や、孤独な奴ほどはまりやすく抜けられねぇ。
最初は気晴らしに入ったつもりが、日が経つに連れて毎日通うようになる。
使う金額もどんどん増えて手におえなくなんだよ。」
信号が青に変わった。
止まっていた者達が歩き出す。
「パチンコで勝てる奴なんて、ほんのわずかな人間だ。」
「あんなに客がいるのに……。」
「客がいようが関係無い。……それが商売だ」
渡瀬の言葉が春本の胸に響き渡る。
世間の恐ろしさを痛感した。