第20章 債務者と書いてカモと読む
「や…やめて…――。」
老婆の細い肩にかけられているボロボロのショルダーバック。
それを荒々しく引ったくる渡瀬。
犯罪だと分かっていても、誰も止めることが出来ない。
それが、彼が醸し出す恐怖という名の雰囲気。
カバンから財布が取り出された。
「春本、見た目で騙されるな。パチンコに依存している奴等は、自分の利益の為に平気で嘘をつく。」
取り出された財布は、まだ真新しい某ブランドの新作の財布。
年金暮らしの老人が買えるような代物ではない。
「……え?」
春本は驚いた。
見た目は本当に貧乏を装っているが、フタを開けばとんでもない嘘つきババアだ。
そんな金があるなら借金なんてしなければいいのにと、誰もが思ってしまう程。
「これが現実だ。」
そう言って抜き取られるカード類。
無造作に地面に捨てられる。
残ったのは下ろしたばかりであろう年金と財布。
「入れとけ。」
それは、春本に手渡された。
「はい。」
財布はセカンドバックの中へ。