第20章 債務者と書いてカモと読む
店内に響く騒音。
機械の前で、とりつかれたように熱中している客。
愛想笑いの店員。
渡瀬は迷わずスロットコーナーへ。
「…パチ屋に入院か?それはご苦労なこったな。」
「あ………。」
同じ機種が並ぶシマの真ん中辺りに座る老婆の肩に渡瀬が手を置いた。
振り向いた老婆の顔面は蒼白していた。
画面の左下にあるランプが光っている。
当たりを示すサインだ。
「出ろ。」
無理矢理立たされる老婆。
「や…やめとくれー。」
老婆の叫びも虚しく、引きずられていく。
周りの者は見て見ぬふり。
店員さえも止めもしない。