第20章 債務者と書いてカモと読む
「あ、もしもしご融資の件ですか?」
「おい、井上さんよぉ。支払日とっくに――」
「回収いってきます。」
朝の闇金の事務所は騒がしい。
鳴り響く電話の呼び出し音は、止むことをしらない。
そして、金を借りに来るものも後をたたない。
「お…おねがいします、今日こそは勝てる――。」
「なら三万な。」
「え?これには十万って――」
机の上に置かれる三枚のお札。
それに驚くみすぼらしい女。
それもそのはず。
借用書には十万と書かれているからだ。
「…今までの利子と迷惑料を引いた額だ。」
「そんな!!それに金利が高すぎ――。」
「金貸しの間では、ギャンブルの借金は毎日取り立てるって決まってんだよ。
気に入らねぇんならよそ行きな。
それとも、今夜旦那と三人で話し合うか?」
「だっ旦那には――。」
「なら、口出しするな……わかったか?」
渡瀬の鋭い眼光が女に突き刺さる。
「は…はい。」
ひどく怯えた女は、頷くと万札を握りしめ事務所を飛び出した。
もうすぐ十時。
パチンコ屋の開店の時刻だ。