第20章 債務者と書いてカモと読む
「やめて!!」
俺を必死に彼女が引き留めている。
そんなにアレが大事か?
なんだよそれ。
誤解なのに信じてもらえない事が一番辛いんだ。
それに気付けよ。
彼女の小さな力じゃ止まるわけもなく、気付けば部屋にいて写真集を手に取っていた。
「やめて!!返して!!」
下から必死で止める桜。
ビリビリビリ―――
なにも言わず破った本。
彼女の大事なモノは一瞬でなくなった。
バシンッ―――
「最低ッ!!」
鞄を抱えて、部屋を飛び出した彼女。
微かに聞こえてくる、玄関の扉が閉まる音。
俺の大事なモノも一瞬でなくなった。