第3章 もう一人の男~
ヴォンヴォンヴオォォン―――
鳴り響く排気音。
ジグザクに動くバイク達。
でも、いつものような輝きが彼等にはない。
空気が重たいまま始まってしまった暴走。
先頭を走るのは彼ではなく、高嶋。
その後ろを望田さん達が走り、そのまた後ろで誠也君達が走る。
誰も騒がない。
コールも何もない。
ただ走っているだけ。
なんだか、寂しくなった。
「アキがいねーと、テメーらは何も出来ねぇのか?」
誠也君の特等席である黒光りする大きなソファー。
そこを今、高嶋が陣取っている。
でかい態度で。
どんな人かはよくわからないけど、あたしは苛立ちを感じた。
空気を乱しただけではなく、彼のいるべき場所まで奪ったこと。
彼を殴ったこと。
それが、何より許せなかった。