第20章 債務者と書いてカモと読む
「で、それで警察に被害届が出たと?」
その夜。
渡瀬は上の組織に呼び出された。
上の組織というのは、西條会直系白川組の事。
目の前にいるのは白川組長本人。
渡瀬は組長室のソファーに座らされていた。
「調子に乗るのも大概にしろ、組を潰す気か?」
若頭の畠中がジッと渡瀬を睨んでいる。
「いえ、別に。ただ債務者(カモ)にナメられたら俺等は終わりなんで。」
渡瀬もまた、畠中をジッと見ていた。
「まぁ、被害届の件は揉み消せる範囲だから問題はない。
…だが、これ以上面倒を起こすな。
それでなくても、世間では闇金の摘発が騒がれているんだ。
お前が摘発されてみろ、俺の西條会での地位が悪くなる。」
「………はい。」
白川の言葉に渡瀬が小さく頷いた。
「もう帰れ。
……これから俺は用事があるから時間がない。
畠中、車を出してろ。」
「はい。」
慌ただしく畠中が部屋を出ていく。
「俺等の仕事は失敗出来ない。
……この意味分かるな?」
そう言った白川の瞳が光った。