第19章 君、金と薬に溺れていくことなかれ
「なにいってるの?居てもいいに決まってるじゃない。」
亜久里の言葉に当たり前の様に言う遥香。
「……は?」
逆に亜久里が驚かされた。
今、目の前の女性は"居てもいい"とはっきりと言ったのだ。
薬じゃなく感情で開いた亜久里の目が、彼女をジッと捉えている。
微かに瞳を揺らしながら。
「いけないなんて誰が決めたの?好きなだけいていいのよ。…さぁ部屋に入って。コーヒーが冷めてしまうから。」
笑顔の彼女にそう促されると、もう断る術はなかった。
というより、魔法にかかった様に部屋に身体が吸い込まれていくようだ。
「いつまでいても構わないからね。」
遥香は笑顔でそう言うと、テーブルにトレイを置いて部屋を出ていった。
気まずさだけが部屋に残る。
「……ゲーム、続きやりましょ。」
けれど棗は笑顔でそう言った。
その気まずさを吹き飛ばすかのように。
「……あぁ。」
そう頷いた亜久里の口元が、自然と緩んだ。