第19章 君、金と薬に溺れていくことなかれ
「棗ちゃん帰ったの?あらまぁ、お友達?こんにちは。」
棗が玄関を開けると現れた女性は、意外にもおっとりとしていた。
見た目で"中毒者"と分かるような亜久里を見ても、顔色ひとつ変えず笑っている。
「……ちわ。」
だからだろうか。
彼は少しその女性に見とれてしまった。
「うん。あのさぁ、しばらく平さん泊めてもいいよね?」
「もちろん、息子が増えるのは嬉しい。」
――息子?
女性の言葉に、亜久里は更に驚いた。
見ず知らずの二十歳前の大男を"息子"と言ったのだ。
正直、耳を疑った。