第19章 君、金と薬に溺れていくことなかれ
「どうした!?」
慌てる誠也君。
「腹いたいの?」
清治君も驚いている。
"生理が始まった"
なんて言えるはずもなく、無言でうずくまる行為は本当に申し訳ないと思う。
だけど、それに反抗するように痛みを増していくお腹。
きっと寒さのせいだろう。
キュッと唇を噛んだ。
パサッ―――
すると身体にかかる温かいもの。
身体が宙に浮いたような感覚になった。
いや、感覚ではない。
浮いているのだ、身体が。
彼に抱き抱えられたことによって。
「清治、走るぞ。」
「あぁ。」
聞こえてくる足音。
彼が、あたしが濡れないように庇いながら走ってくれている。
こんな時にこんなこと思うなんて最低かも知れないが、
――かっこいい。
と胸をときめかせてしまう。
濡れた髪も、滴る水も、彼の優しさも全部。
幸せを感じた。