第19章 君、金と薬に溺れていくことなかれ
「早く帰らないと洗濯物が――。」
電車を降りて駅を出たあたしは、不機嫌な空を見ながら呟いた。
――朝は晴れていたから安心してたのに。
そう思いながらイライラしていた。
もうすぐアレの日かも知れない。
普段ならなんでも無いことでイライラするあたり、間違えないだろう。
「なら、急いで帰るか。」
そう言って、掴まれる手。
隣の誠也君が一歩前を歩く。
あたしの手を引きながら。
「走った方がいいかもよ?……降りだしたから。」
手のひらで雨粒を確認しながら呟く清治君。
彼の言う通り雨は降りだした。
――でも走って帰ればなんとかなる。
そう思った時に限って、腹部に痛みの刃が刺した。
タイミング悪く始まった生理。
下着の中が気持ち悪い。
「………っ――。」
――痛い。
うずくまって押さえるお腹。
彼に握られた手だけが起き上がっている。