第19章 君、金と薬に溺れていくことなかれ
それよりも、この少女に見覚えがある。
秋。
そして、自分の前に立ちふさがる姿。
最後に思い出したのは赤髪の男。
今になっても自分を掻き乱す女と男に不快感さえ覚えた。
「でも、ずっと家に帰ってこないんですけどね。」
「……なんでだよ?」
苦しそうに笑う棗に、思わず亜久里は尋ねた。
「きっと大事なモノ見つけたんですよ。それに…桜は俺と違って周りを幸せにするから。」
「は?」
「アイツの笑顔みたら、嫌なこと全部忘れられるんですよ。きっとあの人もそうだから――。」
棗はそう言うと、空になった缶をゴミ箱に放った。