第19章 君、金と薬に溺れていくことなかれ
「俺、双子の姉貴がいるんス。めっちゃ可愛いんスよ、見ます?」
話題は姉弟の話へ。
そう言って携帯を取り出す棗は本当に幸せそうだ。
大事な者を一日で失った自分とは真逆で。
ギュッと握りしめる少し冷めた缶コーヒー。
それが羨ましくて、昔の事を亜久里は思い出してしまう。
母と大好きだった妹と過ごした楽しい日々を。
「めっちゃ可愛いでしょ!?」
そう言って見せてきた携帯の画面に映し出されているのは、小さな犬を抱いた笑顔の少女。
可愛らしい純粋な笑顔で笑っている。
まるで、大好きな妹のようで。
亜久里は少女と今は亡き妹を重ねてしまった。
その為、胸が一気に苦しくなる。
頑丈な鎖に縛り付けられているようで、激しく痛んだ。