第19章 君、金と薬に溺れていくことなかれ
「ハァハァハァ……。」
ヤミ金事務所を出た亜久里は、フラフラと歩いていた。
もうすぐ雨が降りそうだ。
空が汚れた雲で覆われている。
お金の無い彼は、もう薬を買うことは出来ない。
薬が買えなければ快楽を得ることも出来ない。
そもそも、薬物で快楽を得るなど無に等しい。
それが分かっていてもやめられないのは、ただ"孤独"を満たしたいだけ。
「平…さん?」
突然かけられる声。
通りすぎようとしたバイクが、急に止まった。
振り返れば、微かに見覚えのある顔。
オレンジに近い茶色の髮に、自分とは違う茶色の瞳。
綺麗な顔をした男だった。