第19章 君、金と薬に溺れていくことなかれ
ヤミ金だから簡単に借りれると誰が決めた?
利子や取り立ては違法にしろ、貸すことに関してはシビアだ。
しかし、主婦には甘い。
何故ならヤミ金にとって最大のカモだから。
特にギャンブルに溺れている主婦層は、格好の獲物。
例え女が返せなくても、旦那の方から絞り取れば良いだけ。
と、白川ファイナンス代表取締役である"渡瀬 辰二(わたせ たつじ)"は、眼鏡越しに建物の入口から遠退いていく亜久里を見ていた。
「社長、貸さなくて良かったんですか?なかなかいい男だったのに…。」
窓に張り付くように亜久里を見ている女、"安田 加奈恵(やすだ かなえ)"。
白川ファイナンスの事務員であり金髪のパーマがかった髪が特徴的な女だ。
見た目は少し派手な傾向にある。
そして、何より筋肉が好物。
何を想像しているのか、口がジュルリと音を立てている。
「なら、お前の金を貸したらどうだ?貪り取られるのが落ちだろうがな。」
渡瀬は面倒臭そうに茶髪の短い髮を掻き乱すと、鼻で笑った。
顎髭の蓄えた口元がバカにするようにつり上がっている。
「ひどーい。あっ、もしかして妬いて――」
「消えろ、今すぐ。」
間、髪を容れず、言葉を吐き出す渡瀬。
彼女には興味ないらしく、スポーツ新聞を読んでいた。