第3章 もう一人の男~
「あの人もう出てくんじゃねーのか?年少から。」
「たぶんな。」
一気に空気が重くなる。
あの人が出てきては非常に困る。
少年院を出たら保護観察というのがあるが、あの人にとっては無に等しい。
あの人というのは、高嶋 邦宏(たかしま くにひろ)。
望田さん達と同い年の人だ。
そして、極使天馬の元幹部でもある。
まあ、そこまでは問題ない。
ただ問題なのは上田さんがいないということ。
俺は頭を抱えた。
「やべーんじゃねーか?上田さんがいねーのに。」
拓の顔を見た。
「わかってる…でも仮に出てたとしても出たばっかりだぞ?いくらなんでも――。」
そう拓が言いかけた時、俺の携帯が鳴り始めた。
俺の心とは真逆の程よいリズムのヒップホップの音楽。
携帯のディスプレイを見れば、"望田さん"と表示されている。
なんというタイミングだろうか。
ゴクリと息を飲み携帯を取り出した。