第16章 外れる鎖
「お前、ぜってーここにいろ。いや、こっから出んな!!」
そんな奴を野放しにするわけにはいかない。
一度渡した船だ。
最後まで渡す義理がある。
「は?」
もちろん清治は驚いていた。
けれど、微かに緩む口元。
そこからにじみ出る喜びを感じ取る事が出来る。
――素直に"嬉しい"って言えばいいのによ。
本当に不器用な奴だ。
けれどそういう所が、自分に似ている気がした。
「あれ?どうしたん?」
洗面所から戻ってきた勇人が、目を擦りながら俺達を見ている。
「別に、ガキは早く寝ろ。」
そう言って取り出す煙草。
「ガキ扱いすんなよ。」
少し怒った勇人がベットに入った。
桜にくっつくように寝ている。
――なんて羨ましいんだ。
そう思いながら煙草に火を着けた。