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レッテル 2

第16章 外れる鎖



「お前、ソレはわざとか?」

「は?」

声に反応して善司の顔が横を向いた。
すると、見える宗次郎の顔。
いつも見せないような顔をしている。
例えるなら"般若"。
いや、それ以上かも知れない。
けれど、そうなる気持ちも分かる。
何故なら、山代のオッサンは岩中の若頭のスーツで手を拭っていたのだ。
しかもあのスーツ、何気に高そうだ。
オーダーメイドかもしれない。


――あのオッサンバカだ。


つくづく思う。


「いや、わざとじゃない。近くに拭くものがなかっただけじゃ。」

「世間では、それを"わざと"と言うんだ。」


ボキッボキッ――


そう言った宗次郎は拳を鳴らしている。
殺る気だ。

「だから違うんじゃ!!…そもそもおどれが逃げてこんかったらよかったんじゃ!!おどれが悪いわ!!」


ガスッ――グシャッ――


完全に八つ当たりだ。
ブヨブヨの橋田の腹が、善司のスニーカーの裏に潰されている。

こればかりは橋田に同情する。
このままじゃ、俺が手を出す前に殺られるだろう。

でも、この光景がなんだか笑える。
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