第16章 外れる鎖
「こ…これでいいんだろ?」
ドアの所に立つ橋田が、小さく吐き出した。
どこかを見ている。
――そういえば……。
忘れかけていた怒りが、再び舞い戻ってきた。
「ごめん。」
そう呟いて立ち上がる俺。
ゆっくりと足を進める。
「そーいやテメェ…がどうとか言ってたよな?」
ボキボキと拳を鳴らしながら橋田を見た。
「な…――。」
「お望み通り、肉ミンチにしてやっから…こっちに来いッ!!」
「ヒイィィィ!!」
構える俺を前に、転がるように橋田が逃げている。
「宗次郎、豚が転がって来たぞ。」
「逃がすな。」
「うるさいのぉ、まぁ今回は大人しくきいたるわ。」
ガシッ――
逃げてくる橋田のブヨブヨの顔を、善司が掴んだ。
片手で。
「おどれ、汗かきすぎなんじゃ!!ヌメヌメして気持ち悪いわッ!!」
ゴシャアッ―――
そう言って叩きつける橋田の後頭部。
橋田の口から大量の唾液が飛び散る。
「汚なッ――。」
善司は近くにあったモノで手を拭いた。