第16章 外れる鎖
「どうしたのその手!?」
頭が答えを見出だす前に、入ってくる人影。
汚ならしい場所でも、気にせず俺の手にそっと触れる温かな手。
わずかな明かりに照された顔は、今にも泣きそうな顔をしていた。
「桜…ごめん。」
小さく吐き出す言葉。
情けないけど、唇が震える。
それよりも、また彼女を不安にさせてしまったことが、一番情けない。
「ううんっ――。」
そう言って首を横に振った彼女の目から、わずかに透明な液体が流れ落ちた。
「よかった。」
そして、嬉しそうに笑っている。
涙を目にいっぱい溜めながら。
なんだかそれが、苦しかった。