第16章 外れる鎖
ガンッ―――
激しく降り下ろす拳。
叩く鍵の付いていない取っ手。
これを壊せば、鍵も壊れて開くかもしれない。
望みの少ない賭けだけど、ここで腐っているより遥かに良い。
だから、何度も叩き続けた。
いつの間にか拳から滲(にじ)む血。
別に痛みはない。
それよりもわずかにだが、取っ手がはずれかかっている。
――これはもしかするといけるかもしれない。
淡い期待が胸を過る。
もう一度腕をふり降ろそうとした。
カタッカタッカタッカタッ――――
すると聞こえてくる足音。
何故かこちらに向かってくる。
俺はとっさに元の場所に戻り座る。
ガチャガチャ――
鍵をあける音が聞こえてきた。
――誰だ?
ゆっくりとドアが開く。
「誠也君。」
聞き覚えのある声がした。