第3章 もう一人の男~
でも、ただ一人その空気に馴染めてない人がいた。
その人はずっとベランダで、綺麗な星を隠す汚れた雲に覆われた空を眺めている。
「拓…まだ気にしてんのか。」
誠也君もベランダに出た。
彼が扉を閉めたので、何を話しているかは分からない。
でもただ、その人…いや藤崎先輩は苦しそうな表情でジッと眺めたままだ。
"あたしもベランダに出ようか"
そう考えたけれども、自分が出る幕ではないと感じたあたしは、出るのを止めた。
「大丈夫だよ…あの二人は。」
頬を赤くした西村先輩がポツリと言った。
「そうそう…気にせず俺とベッドに行こう!」
完全に酔っ払っている三善先輩があたしの肩に触れた。
「オメーはそんなことしか言えんのかッ!!」
バコぉッ――――
「いてぇええッ!!」
大川先輩が三善先輩の頭を殴った。
今日は威力が強いのではないか。
あたしは、三善先輩の悲鳴の違いでそう思った。