第15章 疑いと手枷
本当に宗次郎さんはいい人だと思う。
彼が撃たれた時も病院に連れていってくれた。
外国人グループに誘拐された時も手助けになってくれた。
どんな些細な事だって助けてくれる。
まるで"ヒーロー"のように。
「どうした?」
優しい当たり障りのない声が耳に入ってくる。
あたしが見ていた事に気付いたらいし。
「いいえ、なにも。」
首を横に振ってにこやかに笑うあたし。
宗次郎さんといると、なんだか心が休まる。
まるで兄のような人。
本当に自分の兄だったらどれだけ嬉しいだろうか。
思わず口元が緩んだ。
「嬢ちゃん………なんで笑っとんじゃ?」
すると、聞こえてくる低い声。
後ろから漂う不気味なオーラ。
その場の雰囲気が一気に崩されてしまう。
「え?別に…――。」
慌てて後ろを向くあたし。
「いんや笑っとった。ワシの横に乗った時は不安そうじゃったのに……。」
善司さんがジッと見てくる。
なんだろう。
――なんか子供みたいな考え方の人だなぁ。
思わず飽きれてしまう。
「くだらん。」
宗次郎さんはそう呟くと、ハンドルを右に切った。
もうすぐ警察署だ。