第15章 疑いと手枷
「……やっぱり、あの嬢ちゃんただ者やない。」
「さすが若の嫁さんになる御方や。器が違うわ。」
桜が顔を真っ赤にして俯いてる最中。
ヒソヒソと山代の若中たちが話していた。
人から人へと移り渡る"噂"という名の魔物。
移っていく度に、それは飛躍(ひやく)していく。
「……嫁?」
ジロリと宗次郎の目が善司に向いた。
少なからずも怒りを含んでいる。
「知らんわ、アイツ等が勝手に盛り上がっとんじゃ。…まいったわ。」
そう言いつつも、善司は満更でもないというような顔をしている。
「――あ!!もしかして妬いとるんか?悔しいんか?お似合い過ぎるから。それとも、ワシがあまりにもイケメンだから―――」
「ちょっと刀を持ってくる。」
「何でじゃ?」
「試し斬りをしようと思ってな。目の前にちょうどいい"獲物"があることだ。試さない訳にはいかない。」
「は?」
「待ってろ、直ぐに斬ってやる。」
そう言って玄関へ入っていく宗次郎。
何も考えずに言いたい事ばかり言うと、いつかは天罰が下る。
今がまさにソレだ。
不気味なオーラを醸し出した彼を止めることは出来ない。
着物から微かに覗き出す逆立った尻尾。
時折見える牙はまさに"狂犬"。
という幻覚。
怒る者が醸し出すオーラは時には幻覚を 見せる作用をもたらすこともある。(※ウソ)