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レッテル 2

第15章 疑いと手枷


キュッ―――

後ろから聞こえてきたタイヤにブレーキがかかる音。
消えるエンジンの心音。
車だ。
それも見覚えのある黒の車。

ガチャッ―――

扉がゆっくりと開いた。

「遅いわ、おどれ等も亀か?」

更に不機嫌になった善司が降りてきた者に言った。

「え?亀?」

その者は首を傾げている。

「…どうせノロノロと走りよったんじゃろ?」

「いや、違います。ノロノロ走る車の後ろにつかまっとったんですわ。えらい渋滞出来て大変でした。」

「何色や?」

「黒ですが、それが何か?」

「アイツ等かぁ………。」

ギュッと握りしめる拳。
善司の不機嫌さが、更に増した。

黒の車と言えば覚えがある。
例の迷惑カップルに違いない。

「あんとき撃ち殺せばよかったわ……。」

サラリと恐いことを言う善司。

いくら極道だと言っても、そんな派手なことしてもいいのだろうか。
よくニュースになってるし、お昼のワイドショーには必ず放送されそうな話題だ。



暴力団組員、いちゃつくカップルを車内から撃ち殺す。


"ワシも女とじゃれ合いたかった"。


きっと見出しはこうだ。

それを見て主婦達は、

"人殺すなんて最低よねぇ。"

"女と遊びたきゃ風俗でも行けばいいのよ。"

"ねぇ。"

そうやって煎餅をかじり ながらお茶を啜るオバサン連中の話題の餌食となるのだ。


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