第3章 もう一人の男~
十二月。
傷の治りが早かったお陰で無事退院することが出来た。
ママに、
"どっちに帰るの?"
と聞かれて、あたしは彼の家を選んだ。
別に家に帰りたくない訳ではない。
でも、今は彼と共に生活して、同じ時間を共有したい。
触れられなかった分の時間を取り戻したい。
ママはそれを聞くと、怒らずに笑顔で"わかった"と言った。
普通の親なら怒るところだろう。
理解してもらえて本当に良かったと思う。
「そんなの俺がするから、お前はゆっくりしてろ。」
そう思いながら夜二階で洗濯物を畳んでいると、彼がそう言った。
帰ってからずっとこの調子。
大事にしてくれるのはありがたいが、
"あたしだって身体を動かしたい"
などど言えるはずもなく、ただ彼の善意に甘える事にした。