第3章 もう一人の男~
「もう戻ってくるなよ。」
どんよりと曇った空の下。
少年院と記された門の前で、初老近くの男が言った。
「うッス。」
黒髪の短い髪の男が小さく呟く。
片手には黒い布地の大きなバックを持ち、男は軽く頭を下げだ。
そして、歩き出す足。
冷たい風が肌を突き刺す。
「あー…やっと出られた。」
そう吐き出された口の口角が高くつり上がる。
一歩一歩進めていく足が軽やかに見えた。
男の目的地はもう決まっていた。
だからなのか、進める足に迷いがない。
電車を乗り継ぎ、ある駅で男は降りた。
「帰って来たぞ……て出迎えはねーんかよ?つまんねーなぁ。」
男はそう呟くと、また歩き出した。