第15章 疑いと手枷
誠也が留置場に入れられる少し前。
桜は山代組の車内にいた。
隣は何故か善司がいて、は妙に緊張していた。
――勇人君…大丈夫かな……。
一応置き手紙はしてきたが彼女は少年が心配でしかたがない。
まだ十歳しか満たない小学四年生。
夜の住宅地は危険が付き物だ。
「安心せぇ、家にはシケ張りつけとるわ。」
「シケ張り?」
「見張りのことジャ。」
場の空気から悟ったのか、黙って腕組みをしていた善司が口を開いた。
普段は馬鹿なのにこういうことに関しては頭が働くらしい。
は少し彼を見直した。
ゆっくり進んでいく車。
何故か先程から窓の景色が変わらない。
コンビニの看板が、ミリ単位でずれていくだけ。
運転している男は人差し指でハンドルを叩いていた。
それは、彼の苛立ちを現している。
「なんでチマチマ進んどんジャ!!おどれは亀か!?」
善司がキレた。
「すんません、前の奴が遅くて……」
「…前?」
善司は前の車の方を見た。
すると、黒の乗用車の中で男女がイチャついている。
たまにキスを交えて幸せオーラ全快だ。
「クソタレが……。」
それを見た善司のこめかみに青筋が浮き出た。
モテない彼は、他人の幸せがムカついてしかたない。